2人が本棚に入れています
本棚に追加
マグナの父ガルムは村の警備隊長であり長を務めている。母クレアも元冒険者で父の助けでよく家を空ける事がある。家事はもっぱら姉のリンデに任せっきりだ。
姉は戦い事を好まないため両親の訓練指導は受けなかったがマグナにイタズラされると池によく投げ飛ばしていた。
なんと平穏な家族なことか。
『戦争に巻き込まれた近くの村が無くなったそうだ』
『うそ…生き残った人は?』
ガルムが首を横に振るとクレアは涙ぐみ口を抑えて項垂れて崩れ落ちる。リンデはクレアを包み込むように抱きしめる。
『子供たちには秘密にするように村会議で決めた。避難するかは各家族で決めて欲しい。出来れば明後日朝にはみなと共に安全な村まで避難して欲しいと』
『もし此処が戦場になれば貴方は…残るのでしょう?』
『勿論だ。王国騎士団と合流して敵を迎え撃つ』
『それなら私も残るわ』
クレアは覚悟が固まった目をしていた。ガルムは頷いて答える。
『お母さん!マグナを残していく気!?一緒に逃げよ?ね?お父さんも一緒に逃げて。村がなくなっても生きることが大事なんだっていってたじゃない』
クレアとガルムは顔を見合わせた。そして安心した表情でリンデを囲う。
『リンデ。貴女はとっても優しくて強い子よ。だって私たちの子なんだもの。もう私たちの翼は必要ないわ。貴女は立派に育ったんだもの。リンデ。貴女は弟のマグナを守るのよ。マグナを連れて逃げて。愛してるわリンデ』
『リンデ。すまない。これが長の務めなんだ。それとクレアは私と一緒にここに残る。絶対に一人にさせないから。だから心配するな。なぁに、たった数日俺たちと離れるだけだ。何事もなければすぐに帰って来れる。愛してるリンデ』
しばらくリンデは両親の腕の中で泣いていた。
『明後日の朝一番で荷馬車が迎えに来る手筈になってる。村人達と一緒にマグナを連れて避難していてくれ』
━━━━━━━━━━━━━━━
もうすぐ家族と離れ離れになるってのに一度も甘えさせないのがウチの流儀なんだよな。
まぁ、姉さんを驚かせるのも母さん父さんを怒らせるのも楽しかったんだよな。
もう遊べないのか。
最初のコメントを投稿しよう!