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出立の日。勿論何事もないかのように大人達はいつも通り平然を装っている。
子供たちは荷馬車に乗せられた。
リンデは指示係を任せられたのか最後尾の馬車に乗り込んだ。
「やあマグ坊。今日はみんなそろってお出かけか?」
知ってるくせに。
マグナは遠く彼方を凝視して聞こえないフリをした。
返事を返したのは何も知らないアーシャだった。
「ルンダさんおはようございます!今日もいい天気ですね。他村の見学に行ってくるんですよ。何でも村長が企画したらしくって。どうせなら王都の見学の方が良かったのに。そしたらルンダさんにお土産買ってこれたのになー」
「はは、じゃあ今度村長に提案しなきゃだ」
笑ってる場合かよ。
「マグナ、しっかりアーシャを守ってやるんだよ…!」
真剣な眼差しで訴えかけてきたが目を見ずに手を挙げて振って答えた。
「は、はーいマグナに守られてきまーす、へへ(ちょっとマグナ今日機嫌悪いけどどうしたの?リンデさんと喧嘩でもしたの?)」
「べーつにー?」
ルンダさんはいつも世話好きでいつも優しい人だった。
そんな人がもし此処が戦場にでもなったら戦えないだろ。
なんで残るんだよ!
「ルンダさん」
「なんだい?」
「…」
「出発ー!」
馭者が号令を出した。
最後の言葉を言おうと思ったのに。
村に残る大人は最後に子供の顔を見ようと駆け寄る。
みんな悲しい目をして声を掛けてた。
「…行ってきます」
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