感情

2/15
前へ
/49ページ
次へ
 「勇一だけなら兎も角、先生まで……」  隼人は呆れたように溜息を吐いた。 「面白半分でやったことではないよ」 「それはそうでしょうけれど……」  お茶を淹れながら、相楽の声はいつになく小さかった。 「先生は先生なりに、圭ちゃんの心配してくれてたんだから、あんま怒るなよ」 「それはそうだろうが、お前は面白半分だろうが」 「半分は面白半分だが、半分は本気だ」  等と勇一郎は、意味不明の弁解をしている。  圭ひとりで研究所を訪れるよう計らってくれと頼まれて、お使いを頼んだその夜、相楽から電話があった。  圭には内緒で。ということだったので、何事が起きたのかと不安に思いつつ、翌日訪れたら、とんでもないことを知らされたのだ。 「催眠術だなんて、一体彼の何を……」  大学では法律を教えながら、医学博士として、犯罪者の心理を研究する相良は、最近、催眠術なるものに興味を示し、学んでいたらしい。  そうして、その催眠術を掛ける対象として、圭を選んだのだとか。 「先生が催眠術で探ったのは、圭ちゃんの貴婦人像だよ」 「貴婦人像?」
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加