嫁ぎ先からの判決

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「今日はもう解散にしましょう。後日改めて連絡致します。花さん、ありがとう」  まさかの庭園のお散歩どころか、10メートル程で解散宣言をされてしまい、お饅頭さんの中で私は落第したのかと動揺してしまう。時間はかかるだろうとそろそろ席を外そうとしていた父親も仲人も「え?早くね?」と、ビックリしている。 ……どうしよう。 絶対気に入られなかったんだ。やっぱりお饅頭さんの質問に、もっと楽しく美しく其にてお饅頭さんに幸せにしてもらいたいとかちょっと盛るべきだったんだ。  帰ったら何を言われるか分からない、上手くいけば儲けもの、断られたら仕方ないものと思っていたがまさかカップラーメンが出来上がる時間帯で終わるとは思わなかった。  思わず焦ってパパの顔を見ると、一流企業の桜小路グループの傘下になれると思っていたのにてめぇこの野郎と、お巡りさんこっちです!と、言いたくなる程おでこに青筋を立てて唇がプルプル震えている。……怒りのパワーで金髪姿に変身しないよね?思わず今にも爆発しそうなパパから視線を反らし、サラシを巻いている背中がジワリと痛む。痛み止を飲まないと息をするのも辛い背中の傷が、今日は更に増えるのかと俯いていると、それに察したお饅頭さんが声をかけてくれる。 「大丈夫ですか?顔色が悪いですけど……」 「あ!いえ。大丈夫です。ただその、早いな……と。私は駄目だったのかな……って」 「……違いますよ。あ、じゃあこうしましょう」 「……?」  庭園を見渡せるように障子が全て開いた和室に、お饅頭さんはゆっくりと戻り、そこで待っていた青筋を立てたパパの前に「氏家さん」と、声をかける。パパはマジでぶちギレ5秒前の表情から、お饅頭さんの存在に頭を深々と下げて「はっ」と、頭を伏せる。 「花さんを桜小路家に迎え入れたいと考えております。それにちなんで、こちらの準備を設けようと思いましたが気が変わりました。今夜、花さんをお迎えに上がります」  お饅頭さんの発言にパパは顔を上げ、桜小路グループの大企業との繋がりに一瞬頭の中でそろばんを弾いているのだろう。分かりやすい!目の模様がドル$マーク!! 「ありがとうございます!!」  パパはドルマークの目を隠しきれないままお饅頭さんに満面の笑みでお礼を言うが、ニコニコしていた表情から今度は般若のような表情で、 「氏家さんがお礼を言うのは理解しがたいですがね」  薄い横分けされた髪の毛がまるで逆立つようなオーラに、冷たく言い放つお饅頭さんの姿を見て、なるほど!金髪の何処かの種族はこっちか!と思ったが、逆立つ髪の毛が風でちょっとそよそよなびいてわぁちょっと癒し~とも思った私は、自分が今夜嫁ぐという話と、何故お饅頭さんが般若になっているのか、何処か他人行儀でぼんやりと考えていた。
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