嫁ぎ先の真実

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 言葉通り手ぶらに身一つ、氏家の敷居をあとにする。  手荷物もない、財布や携帯も持たない。下着すら持っていかないことにも心配なのだが、お饅頭さんとハンターが外に停めてある、世界で三台しかありませんよ!と、説明されても納得してしまいそうな高級車に誘導される。よし!パンツは明日考えよう!  ハンターが「どうぞお入り下さいませ」と、後ろのドアを開けて案内してくれるので、わぁお姫様みた~いと車内に入ると。 ………?? 「ごめんね花ちゃん。待ちきれなくて早く来ちゃった」 ………??  錯覚かと思わず目を擦る。広くて見たこともない高級な車内の中に、肘をついて足を組み、小さな国買えるんじゃないかと思うほどビカビカした腕時計を付け、スーツを着た何処の王子様の生まれ変わり!?みたいなイケのメンな男性が座っていた。 「あ、間違えました」  もしかしたら車を間違えたのかと、覗いた車内から一度身体を外に出し、周りの景色を確認すると、横にいたお饅頭さんもあってるあってるってジェスチャーをしているので、あっれー?私疲れたかなぁ?ってもう一度車内を覗きこむと、 「花ちゃんおいで。今すぐ君を抱き締めたい」  肘をついていた腕は私に向けて両手を差し出し、少し頬をピンクに染めながら私の名前と今日はどうなされました?あぁ、お熱のせいで記憶が錯乱しているのかな?と思うほどの台詞に頭が混乱してしまう。 「やっぱり間違えました」  高級車の窓にちょっと肘をついて一呼吸する。んー??おかしいな?聞いてないなぁぁぁ。私今日王子様と会う約束してたっけなぁ?カレンダーに「王子」って書いてたかなぁ? 「花さん、現実ですよ」  お饅頭さんが横分けの髪の毛がそよ風レベルなのになびいて、うーん、このそよ風でもなびくのはお饅頭さんの髪の毛も現実だなぁと思うが、車内に座っている王子様は私の中で全く現実味ではない。いつまでも車に乗らない私の姿を家の窓からパパ達が見ていたらしく、最後の最後で抵抗していると思われたのか玄関の扉がバァン!と開く。  お饅頭さんが「花さんお乗り下さい。あの方達に一から説明するのが面倒なので。」と、少しばかりの本音を溢しながら無理やり私を車内に押し込んで、ドアを閉められる。お饅頭さんとハンターが、運転席と助手席に急いで乗り込み車を急発進する。窓には黒いスモークが貼っており、外からは見えない仕様で一先ず言葉通り、王子様を見られる事はなかった……が。 「待たせたね。僕のWife《妻》さぁ婚姻届を出しに行こう。今すぐ行こう」  後ろの席で王子の膝の上に乗せられ、腰から手を回されながら抱き締められているが、これ!どんな状況!?  てか黒髪のイケメンに抱き締められるとか私死ぬの!? 「桜小路グループの社長のたった一人のご子息、そして次期社長の蒼真(そうま)様でございます」  お饅頭さんが、ニコニコといつもの笑顔で助手席から私に説明をしているが、  ぜんっぜん理解出来ませんが!  そしてお饅頭さん、急かした身体にハァハァと息切れしながら眼鏡が雲っている。なんかごめーーん!!
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