嫁ぎ先からの溺愛

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 リビングに向かう広すぎる廊下を歩き、引き戸のドアを開けると大理石の床に、モデルルームのような大きな窓が、展望室にいるような見晴らしが良いってもんじゃない景色が広がっている。どんな素材使ってるの?と、いわんばかりのL字型のソファーに新妻が夢見るアイランドキッチンが大きくて使いやすそうだ。テレビ何インチこれ!! 「こんなつまらない部屋しか用意出来なくてごめん。とにかく急いであの卑しい下品な家から花ちゃんを連れ出して上げたかったんだ」 「……私の家庭事情知ってるんですか?」 「……一応見合いする家柄は全て調べさせて貰ってる。結婚は今まで特に考えたこともなかったんだが、会社の為にもやっぱり政略結婚は仕方ないと諦めていたんだ。だけど後をたたない見合い話を捌くのも面倒だから、叔父には悪いけどあの見た目の叔父を使うと引く女ばかりでね」 「お饅頭みたいですものね」 「医者に糖尿って言われて……ってお饅頭って!アハハ!いや、眼鏡の肥満とあの薄い髪の毛のセットだと大体どの女も顔がひきつるんだよ」 「髪の毛がそよ風で流れてる時は癒されましたけどね」 「そうそう、まるで水槽の中にある水草のようにってアハハハハ!!」  笑い上戸なのか、イケメンが大きな口で笑っている。ていうか身内の髪の毛を水草で例える方もどうかしているが、蒼真さんが笑いながら私の顔をゆっくりと優しく見つめてくる。 「あんな叔父の見た目でも裏表無しに話しかけてくれたり、あんな知性の欠片もない、家族からの虐めに負けない花の強さが僕の心を奪われた気がした。信じてほしい、こんな想いは初めてだ。もう一度言うよ?僕の妻になって欲しい」  夢なら覚めないで! 起きたら夢オチって朝から萎えるやつにならないで!  広すぎるリビングの真ん中で色々頂点に立っているイケメンのプロポーズに、舞い上がらないメスはいねぇ!!ていうかさっぎまで「花ちゃん」呼ばわりが気付けば自然と呼び捨て、スマートな流れで流石です王子。  と言うか、こんなに信じられないくらいの甘い言葉の数々を、私なんかにストレートに伝えてくれて、まして誰からも愛されたことないから嬉しいに決まってる。  出会って一時間もないくせに、王子のストレートな中身、パーフェクトな外見に私の方こそ心奪われた。妻なんかそんな名誉要らないので、貴方様の下僕でいいですと思わず土下座の最高位「五体投地」をしてしまいそうだ、南無……。 「わ、私なんかで良ければ……」 「なんかじゃない。花が良いんだ。花をこの先もずっと愛したいんだ」  顔を両手で優しく持ち上げられ、産まれて初めてのキスの感触に、ただでさえ高い高いこの部屋の場所から本当にそのまま天に召されるかと思った。数秒唇を重ね合わせ、離したと同時に目を静かに開けると、愛おしそうに王子が私の事が好きで好きでたまらないという表情をしている。 「私の存在を花の中に全て入れたいのだけど、それは君の全身の傷を治してからのお楽しみにしておくから。だけど……」  今度のキスは上級者コース! 先生!習ってません!この舌は自由行動でいいのでしょうか!!  いいんです!! 天使と悪魔がいつかその時までに新しいUN●QLOパンツ買っておけよと囁いた気がした。
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