産まれた時から詰み

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 父親になった男は、手続きの方法は知らない、でもけっこう面倒臭いよ?と、遠回しにお前の子供なんだからお前が責任取って育てろやと医者から圧がかかり、嫌々ながらも退院した赤子を家に連れて帰った。 「さぁーて会社どうっすっかなぁ」  いや、会社じゃなくて「私」な?先ずは「私」をどうっすっかなぁが最初に浮かび上がる問題だと思うんですよね。  知ってるかな?赤子の仕組み。先ずね、乳あげないとね死ぬんだこれが。脅しじゃないよ?死ぬの、私。乳飲まないと平気で死ぬ。  あとね、オムツ。けっこう頻繁に汚す。そりゃあね?お尻自分で拭けたらこちとら苦労しない。でもね?届かないの、尻。こうね?手を伸ばそうと思っても、大体お手上げ。言葉通りお手上げのポーズしか出来ない。  色々な説があるけど、新生児からどんどんこのバンザイ寝、減ってくから今だけだよー?この可愛い姿ーって言ってもこの父親全く興味ゼロ。 「あ、リサちゃん?今暇?うんうん、あ、それならちょっとうちの家政婦しない?いいよいいよ子供連れて来ても。うん」  携帯を取り出して何処かに電話をかけたかと思ったら、2歳1歳の女の子二人連れてきた、もう夜の蝶!昔で云ったら某雑誌の蝶の名前が表紙だったけばけばしい女性が現れた。 「は!?何この赤ん坊」 「俺の子供。カミさん亡くなって俺ちょっと色々忙しいからリサちゃんコイツ見てくんない?」 「ば、馬鹿じゃないの!?施設に預けたらいいでしょ。私だって娘二人いるんだから無理だよ!?」 「そう言うなって。此処に住んで良いからさ、あ、あとカード使い放題。ね?」 「……」  リサちゃんこと後に継母になるこの女。  若くして娘二人を産み、元々籍も入れてない娘の男は逃亡し、夜のお店で子育てをしながら懸命に生きてきた継母。  お店で知り合った父親とは身体の関係でお小遣いを貰う仲だったのだが、まさかの乳母の役を夜のお店のシステム方式のようにご指名。  しかし、悪い話でもなかったのだろう。小金持ちの父親に大きな家。カード使い放題という特典もついて断る理由も無い。  大きな家は更に広々と改築され、継母も娘二人もお金は自由、父親のある程度の人脈をフルに使ってとんでもないワガママレディと三人は成長していった。ちなみに一応世間体の為に継母と父親は籍も入れ、連れ子と私の格差のある姉妹が出来上がったのは言うまでもない。  意外にもあげマンだった継母の存在と元々やり手だった父親とのタッグで会社の業績がノリにノッて上昇し、更に規模も拡大した会社の年商は数億単位にまで上がった。  テレビで見るようなお手伝いさんがズラリと並ぶわけではないが、掃除はハウスキーパーさん。料理は家政婦さんが全て作ってくれる毎日に好き放題生きる継母と義姉達。  私の終わりの始まりは、産声を上げた時から既に始まっていたのだ。
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