お久しぶりの皮肉

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「……」  数ヶ月ぶりに見る家族の顔。ていうか何て返事をしたらいいのかわからない。 ……お久しぶりです?いや、凄い他人行儀。血が繋がってないだけで私達家族だよね?と、ヒューマンドラマくらい長いこと一緒に暮らしてきた。家族の輪に全然入れて貰えなかったけど。  強いて言えば昼ドラと韓流ドラマでよく見るドロドロに苛められてきたけど。 ……やっほー!ないないない。暑さのせいでちょっと脳ミソ沸騰しちゃったかなー?多分そのやっほーの「やっ」の所でフライング「死ね」って言われると思う。早い早い、反射神経半端ないねーってなるかもしれない。 「何黙ってんのよ、ゴミ。ていうか携帯家に置いていったでしょ?連絡つきようにないし、桜小路グループの本社に聞いても受付で知らないって言われたから、即効離婚されたと思ってた。よっぽどご奉仕頑張ってるのね。そんな汚いこと真似出来ないわぁ、流石ね」  長女がだんまりしてしまった私に苛々したのか、美人な顔で罵倒してくる。  残念ながら私は罵倒されて喜ぶタイプでもないし、家族と離れて暮らしてようやく気付く。  どんな生き方をしたら、こんな見事に人を見下す性格が出来るのか。 「花ちゃん、このクリニックって桜小路グループが展開しているのよね?貴方のお見合い相手のあのキモいデブのコネで、その下品で幸の薄い顔を治して貰うのかしら?そんな権力あったのねぇ?何で教えてくれないのかしらねぇ?ねぇ花ちゃん、私達家族よねぇ?……わかってるわよねぇ?」  遺伝だな!! もはや才能。なんなら感心する。ここまでハッキリ私にとってメリットもない頼まれ事なんて普通言えないもん。 「花さん?大丈夫ですか?もう診てもらえますよ?」  そう太さんがクリニックの玄関から顔を出して目を見開く。  私の今いる状況を数秒で察知したのか、うわ、タイミングわりって顔を堂々と隠さず出すそう太さん。 「あらぁ~桜小路様~。花がいつもお世話になっております。未熟な部分ばかりでご迷惑かけておられませんか?私どもにご連絡頂けたらいつでも駆けつけますよ」  継母がそう太さんに向けて、一体何に駆けつけるつもりなんだろうみたいな発言をかまし、アラフォーの子持ちがクネクネしながら女を主張している姿、まして一応継母のそんな場面を見るのは不快以外何者でもない。もはや苦行。 「……ご心配なく。花さんと幸せに暮らしております。花さん、院長がお待ちですので今日も【特別】で【スペシャル】な【最高】の【VIPコース】を心置きなく受けましょうね」  そう太さんがわざとに継母達の大好きそうな言葉を連発し、継母達はポカーンとしている隙にクリニックの階段を上がっていくと、現実に戻った二人が小さな声でヒソヒソと話す。 「……ママ、あの服って」 「……わかってるわよ。しかもあのバッグだって本物よ。もしかしたらあのデブって重役なんじゃないの?」 「今日パパに聞いてみようよ」  苦虫を噛み潰したような顔を背中で感じながら、クリニックのドアを開けた。
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