大逆転サヨナラ勝ち

3/3

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
 披露宴の豪華な会場の扉がゆっくりと開く。  そして開いた瞬間ざわつく会場。勿論一番騒いでいたのは、親族側に座っている氏家 家だ。 「おいっ!!花の隣にいるの桜小路グループの一人息子の蒼真様だぞ!?」 「はぁぁぁ!?なんであのゴキブリが!?あのキモデブはどうなったのよ!!」 「ちょっと!パパママ!!何でゴミがあんなイケメンと並んでるのよ!!」 「……お腹減った」  予想通りの反応している家族とも呼びたくない家族達が、周りから不快な顔をされていることに全く気付かず、大声を上げて騒いでいる。  あまりの声の大きさに注意をしようとその氏家 家の背後に近づくそう太さん。その存在に気付いたパパはそう太さんに怒鳴っている。 「なんだよ!デブ!てめーダミーかよ!ふざけんなよ?」 「そうよ!まんまと騙されたわよ!!長女ちゃんの方がよっぽどあの人にお似合いなのに!」 「あーぁキモデブに騙されるとか黒歴史なんだけど」  周りがちょ……何も知らないの?あの人らとざわざわ青ざめた顔で皆引いている。 「失礼ですが、これ以上騒ぎを起こしますと警備員を呼びますよ?」 「呼びたきゃ呼べよ!てめーが糞デブのダミーって世間にバラしてやろうか!あ!?」 「ご挨拶は以前しましたがね?桜小路グループの専務取締役桜小路そう太と申します」 「「「………!!!」」」 「ご飯まだぁ?」  きっと彼らは明日から地獄を見ると蒼真は言っていたが、私はあんな家族でもそんなことを望んでいない。  隠れて動いていた氏家会社の元請けや取引先の契約切りも、その裏で私もコッソリと動いていた。また一からやり直せる程度の繋がりを残してあげたのは、ここまで育ててくれたせめてもの恩返しだ。  あとはパパの努力と継母のあげマンを信じるしかない。    今はまだ、氏家 家にはこのガラスの靴誰の?ちょっと履いてみて券の取得すら持てないのだから。  少しだけでも良い、気付いて欲しい。人に傷つけられた時、どんな思いをするのか考えて欲しい。  誰にも助けて貰えず、絶望しか無かった弱者の気持ちになった側の立場になって、行いを改めて欲しい。  最後のチャンスを与えるのだから。最初で最後の私からのプレゼントだよ。  参列しているお客は千人を優に越えてる。左右見渡すと、どこぞやの社長や著名人やら芸能人やら、大物が勢揃いしているが、恥ずかしながら私が出した招待状は一つだけ。 「花ちゃーんお綺麗ですよぉぉぉ!」  家政婦の高橋さんが拍手をしながら大きな声で呼んでくれる。  希望の一筋すら持てないあの家で、人間扱いをしてくれた唯一の人。  私が家族に苛められる度、薬を塗ってくれた。心配もしてくれた。料理を教えてくれたあの時間は私の宝物です。  高橋さん……大好きです。 でもきっと、近々氏家 家から金目の物は無くなりますのでご了承下さい。 「……花。本当に綺麗だ」 「……ありがとう」 「……こんな大勢の前で世界一綺麗な花を抱けたら、どんな興奮と幸福感を感じられるだろうか」 「……っ!?」  シンデレラになれた私。 宝石が散りばめられたガラスの靴は、少し靴づれするけど我慢する。  だって幸せだもん。 「失礼ですがそこの女性、その美しい瞳に吸い寄せられました。お名前を伺っても宜しいでしょうか」 「……は?……え?」 「こんなに美しいのですからご結婚とかされておりますよね」 「……え?いや、独身ですけど」 「あぁわたくしは幸運です。良かったらお名前をお聞きしても宜しいでしょうか」 「……高橋……です」 「わたくし桜小路そう太と申します。今夜は空いてますか?」 「……は、はい」 【完】
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加