突然のお見合いに詰み

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突然のお見合いに詰み

「ただいまー!!一家の大黒柱のお帰りだぞー。さーてリサと長女ちゃんと花に話あるからこっちこーい!!」 っっ!?  全身ブランドスーツで身を包み、パパが突然帰国して帰ってきた。帰って来ることを知っていた継母と長女は、リビングで既に待機をしているが、次女は自室で体内にカロリーを摂取している為か出てこない。そもそも名前も呼ばれていないが、その代わり珍しく私の名前を呼んでいる。  全く検討もつかない呼び出し。最後にパパと会話をしたのはいつだろう。私の名前を呼ぶことも知っているのか、毎日ハウスキーパーさんが掃除をしている広いリビングで、空いてあるソファーに座っても、同じ顔をした二人は私に見向きもしない。 「で?わかったの?」 「私イケメンじゃないと無理なんだけど」 「まぁ、ちょっと……な」  三人は私の知らない話題を、何やら興奮と落胆が入り交じった会話を広げている。呼んでおいて部外者扱いは止めて欲しい。 「一応聞いた話では年齢は50歳近く。離婚歴は……10回。で、その度に子供をもうけている、とか」 「「はぁ!?」」  長女は、私無理ってソファーから立ち上がり、継母はそんな男に長女を渡せないとか怒ってパパのお土産を漁る。私もそのお土産のお菓子が欲しいのだが。 「花~。良かったなぁ~。お前の結婚相手が見つかって」 聞いたこともない猫なで声のパパが、私の顔を見て時差ボケなのか、寝言なような事を私に向けて話している。 「あら、本当ね~花ちゃん。取り柄も何もない貴方でも氏家に貢献出来て良かったわね~。寂しくなるわ~。元気でね~」 「ゴミでも女のゴミで良かったじゃん。離婚されても戻って来ないでね。空気が汚染されるのよ」  継母と長女が同じ顔をしながら、ヒアルロン酸を注入した施術帰りのテカテカ顔で、パパのお土産のチーズタルトを長い爪で頬張っている。  その食べたチーズタルトのせいで唇もテカテカしてるのを教えてあげたい。 「ねぇ何の話?」 「「「お見合いの話」」」 「は!?誰の!?」 「「「お前の」」」 リハーサルもしていないのにきっちりハモる三人と私の見事な掛け合いに、思わず遠くで高橋さんがキッチンで肩を震わせて笑ってやがる。てかそのエプロンのポケットに入ってあるキャビアの缶詰めはどういう事だ。 「いやな、向こうで仕事の食事会してたら桜小路グループの身内が嫁を探してるって聞いて、それならうちには娘が三人いますって言ったら、トントン拍子で話が進んでよ。桜小路グループって言ったら3本の指に入るほどの財閥の大企業だぞ!桜小路とパイプ繋いだら氏家会社の安泰も良いとこだ」  パパが高橋さんに例のワイン持ってきてと頼んでいる。指示通り持ってきたワインは、一本500万はするから特別な時以外は開けないと閉まっておいたあのワイン。  それが開けるということは、今日はその「特別な日」になったのだろう。コルクの栓が抜けたと同時に、私以外の皆が、わぁ!と盛り上がりながらグラスに注いで乾杯している。  騒ぎを聞き付けた次女が何で私抜きでチーズタルト食べてるの!と怒って暴れているのを遠くで見ていた。
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