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私は、この屋敷の主、リデラお嬢様にお仕えする執事のヒースと申します。この屋敷にはお嬢様と私しかおりません。お嬢様の母上がお嬢様を嫌っているようで、この小さな屋敷に追いやったのです。お嬢様は養女で、お嬢様の父上が屋敷の前で倒れているところを拾って自分の娘にしたらしいですね。私が執事となったときにはもうお嬢様はいらっしゃったので詳しいことは分かりませんけどね。
「ヒース、何をぼうっとしているの」
お嬢様に叱られてしまいましたね。実は執事と言いながらも結構暇なんですね。元々貴族ではないお嬢様は自分のことは何でも自分でやってしまいますし。おそらくお嬢様は私のことを兄か何かだと思っているのでしょうね。
「お嬢様の美しさに見惚れておりました」
「な、なにをいきなり!?」
笑みを浮かべて答えた私に、お嬢様は顔を赤くなされる。ふふ、お嬢様はやはり可愛らしいですね。
「私が美しいなど、そんなことあるはずがありません。私は生粋の貴族ではないのですから」
時折、お嬢様は的外れなことをおっしゃいますね。お嬢様が生粋の貴族ではないことくらい知っておりますよ。貴族が必ずしも美しいなんて常識はありませんよ。でも、そんな少し自虐的なお嬢様も可愛らしいですよ。私の手で傷ついて、私の手で癒されてくださいね。
「私は貴族ではございませんので、貴族様の美しさなど分かりません」
「ヒースは変わっていますね」
やはり気づかないのですね。私が、鈍感なお嬢様が気づかないくらい広い檻を作っていることに。私の忠誠と真の愛という名の広い檻を。私はあなたに仕えたくてわざわざこの屋敷までついていくことを志願したというのに。
でも、私は鈍感なお嬢様を愛しておりますよ。貴女がこの檻から逃げ出さないように常にお傍で見守っていますよ? 檻の外は危険がたくさんありますので、逃げ出さないで下さいね?
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