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私
そう、チャンスというのは、彼にとっては、次こそはばれないようにやる、という意味でしかないだろう。だから、許したところで、きっと、彼はまた浮気をする。けれど。
「本当にもうしないの?」
そう聞くと、彼は何度もうなずいた。嘘だと思ったけれど、私は許すことにする。いや、表向きは許すことにして、でも本当は許さない。本当に、最後のチャンスを与えるのだ。ただしそれは、浮気をせずに私と暮らしていくという意味のチャンスではない。そんな意味でのチャンスはもうない。そうではなくて、浮気をせずに生き続けることが出来るかどうか、という意味でのチャンスだ。そのくらいのチャンスは与えてもいいだろう、と思ったのだ。そして何より、彼に選択権を与えることで、もし私の中の悪魔が彼を殺すことになったとしても、その責任は私ではなく彼にあるのだと思うことが出来る。
そう、もし彼が浮気をしたら、私の中の悪魔は、確実に、彼を殺そうとするだろう。そしてもうこれ以上私はその悪魔のすることを止める気はない。だから。
「もし、今度裏切ったら、その時は、覚悟しておいてね」
そう宣告した私に、彼は、ほっとしたような顔で、嬉しそうにうなずいた。
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