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ただの通り雨だと思っていた。
学校からの帰り道。
賑やかな街中を歩いていれば、
パラパラと雨が降りだした。
天気予報は1日晴れだと言っていたのに。
雨の勢いは瞬く間に増して、
ザーザーと音を立てて打ち付ける。
こんな降り方はきっと通り雨だ。
周りの人々も蜘蛛の子を散らすように
雨宿りをするべく我先にと走り去っていく。
例に漏れず雨から逃れようと駆け出せば、
バケツをひっくり返したような豪雨へ変わり
視界が白い雨に遮られた。
どこか雨宿り出来る場所は無いか。
走りながらそう考えた時、息を呑んだ。
先ほどまで自分は街中に居たはずなのに、
いくら周りを見渡せど、
どこにも建物らしき影がない。
人の姿も、標識も、看板も、なにもかも。
その事実を認識した瞬間、
立ち止まりかけていた足に力を入れた。
あり得ない、あり得ない!!
轟々と降りしきる雨に身を晒しながら、
ただただ先も見えぬ道を走り続ける。
篠突く雨から逃げるように、
息を整える間もなく駆け抜けた先。
気付けば雨が上がっていた。
驚いて足を止めれば、
勢いを殺し切れずその場に倒れ込む。
手をついた場所は石畳のようで、
顔を上げて前方に目を向けると、
其れは遠くまで真っ直ぐ続いていた。
ふと、後ろを振り返る。
2本の赤く太い柱が視界に入り、
上へ上へと目で追っていけば
其れが大きな鳥居だと分かる。
ああ、そういう事だったのか。
青く澄み渡る空を見上げながら
ようやく理解が追い付いた。
今までの不可思議な現象も、
全ては人智の及ばない存在の仕業。
神に、隠されたのだ。
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