雨上がりの決意

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 その時、先ほどよりも静かになっている事に気付く。とはいっても、道ゆく人や車の音は後をたたない。首を傾げると、傘をふとどかした。  開けた視界に飛び込んだのは、雨上がりの真っ青な空に浮かぶ虹だ。歩道の脇に立つ木が、微風に揺れて残りの雨粒を顔にふっかける。それに思わず首を振って拭った時、コロコロとした笑い声が聞こえた。出所を探そうと必死に辺りを見回すと、自然に顔が上を向く。淡くかかる虹に、確かに見た。二人が傘を揺らしながら手を取り合い、笑ってこちらを見下ろす姿を。 「パパ、笑ったね」 「ほんと。これで安心......」  手にしていた傘は、呆気なく弾けて水たまりに変わる。見下ろしたそこに映るのは、血色を取り戻した顔と、諦めかけていた自動車の運転に対する世の中への発信に再び燃える瞳だ。  まだ立ち上がるには不完全であっても、雨上がりに見た二人が今でも支えになってくれている。そう信じた大きな一歩を、未来の交通安全に繋げたい。失った命の為にも、一人一人に守る責任を、今一度。 完
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