雨上がりの決意

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 傘は買わなかった。もう何週間も心に穴が空いた状態は、今正にこの身を打ち付ける猛烈な豪雨の景色のようだが、それでも買わなかった。  ただ一歩を踏み込むだけでもしぶきが立つ。なのに、子どものように駆けた。少し背伸びをして手に入れた革靴も、これでは履き潰した靴となんら変わらない。前ほど碌に手入れをされなくなったスーツは、肌にみるみる密着していく。走っているうちに邪魔になったネクタイは、早々に取っ払っていた。一粒一粒が大きな雨は、まるでその辺の川から這い上がってきたような姿にさせていく。
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