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「……き…と…とも…朋希!!」
自分を呼ぶ声に朋希が目を開けると、そこには泣きそうな顔をしたコウの姿。
あれ…俺、どうしたんだっけ…?
左足と、右の脇腹がひどく痛む…。
どうやら足を滑らせて、落ちてしまったらしい。
近くに沢でも流れているのか、水音がする。
雨はまだ止む気配がない…。
コウの肩を借りて、雨が当りにくい木の下に行き、寄りかかるように座る。
が、そこまでが限界で、これ以上動けそうになかった。
ジーンズの後ろポケットを探ってみるが、スマホがない…どうやら、落ちた時にどこかにいってしまったようだ。
「朋希!大丈夫か!!」
スマホはない。
コウは、人に見えない。助けを呼んでも来てくれない可能性が高い。
どうする?どうしたらいい…?
その時、ピクッと、コウが肩を揺らした。
その反応を見て、朋希はもうあまり時間がないのだとわかってしまう。
俺の心配より、自分の心配をしろよ…神様が指定した時間に間に合わせなくちゃいけないんだろ…?
「俺はもう、動けない。だから、置いていけ」
「何言ってんだよ!!朋希を置いて、行かれるわけないだろ!!」
「コウ……」
「俺、朋希助けられるなら、このまま消えても…」
朋希は、顔を覗き込むコウの胸元を、ぐっと掴んで引き寄せた。
「馬鹿か!お前は!!」
「朋希…?」
「それを俺が喜ぶと思ってんのかよ?」
「でも…」
「俺のこと思うなら、お前がやることはここで消えることじゃない!」
「朋希…」
「最後にきっちり、やり遂げろ!…俺が、見たいんだよ。幸助。お前が架ける虹を、俺が見たいんだ。見られなかったら…一生後悔する。だから、行け」
朋希は、掴んだコウの胸元を離すと、手のひらでぽんっと軽く叩く。
コウは、一度、ぐっと歯を噛み締めると、立ち上がる。
そして、朋希の目をしっかり見ると、走り出した。
朋希はコウの背中を見ながら、再び意識を手放した…。
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