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3 コウと朋希
神様に指定される日時は、まだコウもわからないらしい。
そんなわけで、コウと朋希の不思議な同居生活が始まった。
コウは、睡眠や食欲といったものが薄く、何日もしなくても大丈夫らしいが、ないわけではない。
一緒に食事をして、一緒に眠る…そんなことを繰り返しているうちに、朋希は段々とコウがいる生活に慣れて来ていた。
ガコン!
バスケットゴールのリングに弾かれてボールが落ちる。
夜の公園。古びたゴールが設置されている場所で、朋希は先ほどからスリーポイントシュートを試みているが、今のところ一本も入らない。
「あーーー!またはずれたー!!」
最近、バスケ漫画の影響か、仲間内でバスケが流行りなのだ。
しかし、現実は漫画のように上手くはいかない。
「………」
コウはそんな朋希の姿を、少し離れた場所であぐらをかいて見ている。
ゴン!
朋希が放ったボールが、またリングに嫌われて落ちた。
「あー入らねぇ!!」
朋希が嘆いた時だった。
「…朋希。ボール貸して」
「ん?いいけど」
朋希が投げたボールを受け取ったコウが、ボールを扱う姿を見ると、明らかに手慣れている。
「コウ、バスケやってたことあんの?」
コウは答えることなく、薄く笑い、ゴールの真正面に立つ。
体重のありかを確かめるように足踏みをし、二度ほどボールをバウンドさせると、深呼吸。ふと顔を上げてゴールを見据える。
伸び上がるように軽く跳ぶ。
ボールがコウの手を離れ…
パスッ!
軽い音を立てて、リングにかすりもせずボールが吸い込まれた。
コウは、それを見て複雑な表情を浮かべると、軽く自分の足を撫でる。
「…すげぇ……」
呆然とした呟きにコウが顔を上げると、朋希が弾けるように満面の笑みを浮かべる。
「コウ!お前すごいな!!」
興奮した様子に、思わずコウもつられて笑ってしまう。
その後、目線や腕の使い方など、コウがアドバイスをしつつ、朋希がチャレンジをしてみるが、最初は中々入らず…やっと入った時には、思わずお互いに抱き合って喜んだ。
この時、朋希はコウの純粋な笑顔を初めて見た気がした…。
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