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翌日、山に登れる格好の朋希と、山に登るには軽装すぎるコウは、真光山に向けて出発した。
空は、どんよりとして、今にも雨が降りそうだ。
「虹」が出る…ということは、これから間違いなく雨が降るのだろう。
コウは、雨が降っても全体的な感覚が薄いため、問題ないのだそうだ。
対して、朋希はしっかりとポンチョを持参である。
こんな事もあろうかと、前もって買っておいて正解だった。
真光山の登山口に着き、お互いに頷き合うと、山へと足を踏み入れる。
いつもはそれなりに登山者もいる山なのだろうが、予報で雨だとわかっている日に登ろうとする人もそういないらしく、朋希とコウ以外、登る人はいない。
登り始めて30分くらいした時だろうか。雨が降り出す。
ちょうど、少し先に屋根のある休憩所を見つけ、そこに駆け込む。
二人揃ってベンチに腰掛けた。
「なぁ、コウ」
「ん?」
「時間、っていつなんだ?すぐいかないと間に合わない…?」
「いや。まだ余裕はあるけど…」
「そっか。じゃあ…」
朋希はリュックから、数個のおにぎりを取り出す。
「食う?」
コウは、笑顔でおにぎりを受け取ると、さっそくラップを剥がして食べ始める。その様子を見て、朋希も食べ始めた。
二人の前には、雨にけぶる山の景色が広がっている。
屋根から落ちた雨の滴が、地面で跳ねる音が響く…。
「朋希」
「…何?」
「今日まで、本当にありがとうな」
「………」
「俺さ…実は朋希に、嘘ついた」
「……え?」
「俺、死んだの。事故でも、病気でもないんだ」
コウは、とつとつと話し始めた…。
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