灰原君は届けたい

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 どうしてなんだ。  僕は密かに侵入した校舎の屋上で、入道雲が湧き立つ夏の空を見上げて思った。  あれから、もう二時間以上が経過していた。  それなのに、彼らは一向に現れない。  ミン、ミン、ミン、ミー  校庭からは、けたたましい蝉の鳴き声が聞こえてくる。 「熱中症にでもなっちゃったんじゃないのー」  彼女が、また、適当なことを言う。  彼らのテクノロジーをもってすれば、熱中症になどなる訳がない。  ん?  そこで、僕はある事実に気が付いた。  今、僕、口に出して言ってないよね。  「どうしてなんだ」って。  僕は黙って空を見上げていただけだ。  なのに、何で、何で分かったの?  僕が考えていること。  僕は、そっと彼女を見つめた。  ひょっとして、やっぱり彼女は…… 「何で分かっ……」 「顔に書いてある〜」  僕が尋ねようとした言葉に、彼女が被せてくる。そして、 「どうして!僕がこんなにも熱い想いを送っているのに。どうして君たちは来てくれないの?君たちには届いていないと言うのかい?この僕の熱い想いが。どうして……どうしてなんだーーー!」  彼女は、抜群のスタイルを誇る八頭身の身体を目一杯に伸ばし、さらに、スラリと長い右手を僕が見ていた遥か遠くの空へと差し伸ばした。  美しい、美しいけど…… 「ひどいよ袴田さん。僕をバカにしているよね」  すると、袴田さんは、可愛らしい赤い舌をペロッと出した。
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