灰原君は届けたい

2/2

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「だって、灰原君がいけないんだよ。私がデートに誘ったのに、学校に飛んでっちゃうんだもん」  袴田さんは屋上に出る為の出入り口に腰を降ろすと、白いスニーカーと靴下を少し乱暴に脱ぎ捨てた。  そして、スカートの裾を捲り、僕が暑さ対策の為に持って来た水を張ったタライに、白くて長い両足の先を浸した。  それから、袴田さんは可愛らしい黒いレースの日傘を差すと、膨れっ面をして僕を睨んだ。  いつもの黒目がちの大きな瞳が、今は線を引いたように細い。 「そんなこと言ったって、急に連絡が届いたんだからしょうがないだろう」  どうしてこんなに美しい人が、僕の彼女をやっているのか皆目分からない。  自分で言うのも何だが、僕がいいなんて、袴田さんの美的感覚はズレている。  そのズレはどこから来るのか?  地球外生命体。すなわち宇宙人だからではないかと、僕は疑っていたのだけど、昨年の夏、二週間に及ぶ僕の独自調査の結果、彼女が人であることが証明された。  誠に残念だ。僕は宇宙人の第一発見者になり損ねたのだ。  しかし、遂に宇宙人発見の二度目のチャンスが巡ってきた。  なんと、今日の朝、僕がベッドでうとうとしていると、彼等からのメッセージが急に届いたのだ。僕の頭の中に。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加