灰原君は届けたい

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「もう、揶揄わないでよ」  僕が袴田さんに文句を言っていると、   ”……来る”  あの、高く美しい女性の歌声が聞こえてきた。 「え!この歌声!」  僕は慌ててサンドイッチを飲み込むと、キョロキョロと辺りを見回して、歌声がどこから聞こえてくるのか探した。  宇宙人が近くに来ている?  僕は興奮する気持ちを宥め、耳を澄まし、声の出どころを慎重に探ぐっていく。  歌声は、かなり近くから聞こえていた。  その時だった。  袴田さんが、スクッと立ち上がった。  そして、バッグからスマホを取り出した。 ”く〜る、きっと来る〜、きっと来る〜“  スマホからは、あの有名なホラー映画の主題歌が流れていた。  それは、今朝、僕がうとうとしている時に聞いた、高く美しい女性の歌声と同じものだった。 「もしもし……」  袴田さんが電話に出ると、その歌声も止まった。  そう言えば、今朝も歌声が止まった時、袴田さんはスマホで誰かと電話で話していたような。  まさか、そんな……
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