15人が本棚に入れています
本棚に追加
「もう、揶揄わないでよ」
僕が袴田さんに文句を言っていると、
”……来る”
あの、高く美しい女性の歌声が聞こえてきた。
「え!この歌声!」
僕は慌ててサンドイッチを飲み込むと、キョロキョロと辺りを見回して、歌声がどこから聞こえてくるのか探した。
宇宙人が近くに来ている?
僕は興奮する気持ちを宥め、耳を澄まし、声の出どころを慎重に探ぐっていく。
歌声は、かなり近くから聞こえていた。
その時だった。
袴田さんが、スクッと立ち上がった。
そして、バッグからスマホを取り出した。
”く〜る、きっと来る〜、きっと来る〜“
スマホからは、あの有名なホラー映画の主題歌が流れていた。
それは、今朝、僕がうとうとしている時に聞いた、高く美しい女性の歌声と同じものだった。
「もしもし……」
袴田さんが電話に出ると、その歌声も止まった。
そう言えば、今朝も歌声が止まった時、袴田さんはスマホで誰かと電話で話していたような。
まさか、そんな……
最初のコメントを投稿しよう!