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森川は、その日のことをはっきり覚えていて。
俺たちは付き合うことになって。
「もーりーかーわー。いつまでいるんだもう帰れ。」
2人で飲むならもっぱら俺の家になってしまって、森川はウチに泊まって翌朝自分の家までジョギングを兼ねて走って帰るのが恒例となった。
しかし、朝一緒に走って、そのあとごはんを食べても、ずっと居座っていることもしょっちゅうで。
「じゃあ、穂積先輩。あと1回キスしてくれたら帰ります。」
「お前、何回目のあと1回なんだよ。最後だからな。ちゃんと帰れよ。ほらこい。」
あと1回の最後の恋。
「きょうこれから、穂積先輩、何するんですか?」
「え、特に決めてないけど。掃除とか洗濯…」
相手はまさかの男。しかも後輩。
「じゃあ、まだまだ俺といましょう。」
「なんでだよー。キスしてやるからもう帰れよ。」
「冷たいなー。ほずみんは。」
「その呼び方、あと1回言ったら殴るからな。」
「えー。暴力反対。」
「ほら、キスしてやるから来いって。」
「ほずみんがきてよー。」
ソファーに座ってる森川に覆い被さってキスしてやった。深い深いキスだ。
「ほら帰れ。」
「骨抜きになりました。帰れません。」
めんどくさいヤツに捕まってしまったみたいだ。
〈了〉
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