【BL】試してみましょう

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居酒屋の匂いと汗を体から剥がしたくてシャワーを浴びた。 着替えのことは何も考えていなかったが、とりあえずガウンを着て、歯を磨いてから脱衣所を出れば、森川がベッドに座っていた。 寝ぼけ眼で俺を見つめてふにゃふにゃと笑顔を見せて来た。寝起きなのに、ご機嫌でいられるタイプなのか。 「森川、シャワー浴びてこい。居酒屋くさいぞ、お前。それに寝る前は歯を磨け。」 冷蔵庫を開けて物色していると背中が暖かくなった。森川に抱きつかれている。 居酒屋の匂いがする。 「穂積先輩。石鹸の匂いですね。」 「シャワー浴びたから。お前も早く浴びてこい。臭い。」 「先に寝たら泣きますよ。」 話なら朝までだって聞いてやるつもりだから、先に寝たりはしないけど。 「いっかい寝たのに、まだ酔ってるのか?」 「寝てませんよ。寝たふりです。」 振り返れば、目尻をさげて俺を見つめてくる。 目隠しすれば…。視線を唇に落とせば、永久脱毛しているのか女子とあまり変わりない口周りに見えた。 「えー。穂積先輩、俺の顔好きですか?」 目を細めて甘えるような顔をするから、たまらず、顔を逸らした。男のくせにかわいい。ん?かわいい?男が、かわいい?? 「早くシャワー浴びてこい。お前、臭いままなら1回も試さないからな。」 「ひどいな、臭い臭いって。わかりましたよシャワー行って来ます。」 口調が少しだけ拗ねた子どものようになった森川がそのまま浴室に向かったから、ほっと胸を撫で下ろした。 なんなんだ、あの顔は。 それより、かわいいって思った俺はなんだ?
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