14人が本棚に入れています
本棚に追加
お前、膝には乗らないだろ。
「ははは。背中は撫でるけど、膝には乗らないだろ。変なヤツだな。森川。」
「じゃあ、傷ついた俺を抱きしめてくださいよ。」
森川が涙をボロボロこぼし始める。
「二股なんて聞いてない…。俺、大好きだったのに。」
小さい声を震わせながら、うっうって息を吸っている。泣き上戸でもあるのかな。手の甲で涙を拭って鼻を啜っている。
抱きしめて、背中を摩ってやる。
かわいそうに。本当に大好きだったんだな。
「もう、俺。恋しません。」
俺の胸元に顔を埋めて、俺の着ているガウンに涙を染み込ませる。
「バカだな。俺に宣言するな。」
「穂積先輩も彼女いないですよね。なんでなんですか。」
痛いこと言うなあ…。なんでそんなこと聞くんだよ。
「…俺が。仕事ばっかして、彼女を大事にできなかったからだよ。」
「私と仕事とって言われたんですか?」
「…言ってくれたら、話もできたけど。相手はわかってたんだろうな。」
「え。」
「答えなんか出せないって。だから、自然消滅。」
森川が首にかけているタオルで、森川の涙を拭ってやった。
俺もまだまだ酔ってるんだろうな。こんなことを男にするなんて。
最初のコメントを投稿しよう!