涙雨

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 ゆっくりと目を開けると目の前はさっきまでの曇空が嘘のようにどこまでも青い空と海が広がっていた。  「こんな場所があったんだ」  「次は〇〇駅」  停車すると無意識に電車を飛び出し無人改札を出た。  私は目を瞑り大きく深呼吸した。さざ波の音と磯の香りが沈んだ気持ちをゆっくりと浮上させてくれる。  私はそのまま砂浜に入ると鞄も靴も脱ぎ捨て波打ち際まで走った。途中こんな事をしている自分がなんだか可笑しくて大声で笑って叫んでしまう。  「ほんと学生かっつーの」  波打ち際に来ると寄せては返す波に足を撫でられヒヤッとする。  でもその冷たさが私のポッカリと空いた穴を優しく満たしてくれるような気がした。  そうしていると、自然と「今までありがとう」と言葉が出てきた。  私は踵を返すと駅の方まで歩いて帰る。  もう振り返らない。  これからまた新しい自分をスタートするんだ。  一歩一歩強く踏みしめ歩く私の背中に聞こえる波の音が、頑張れと応援してくれてる気がして、もう一度心の中で【ありがとう】と唱えた。 了
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