涙雨

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 いつも私が座っていた彼の隣には、知らない女性が座っていた。  絡み合う手を見てそれが同僚や家族の類ではないことを一瞬で悟ってしまう。  私はそれ以上近づけず立ち尽くしていると電車のドアが静かに閉まりそのまま何も言わず2人を乗せ走り去っていってしまう。  こうなる事も想像していた。  あんなに魅力的な彼だもん。  恋人がいないほうがおかしい。  分かっていた。分かっていたはずなのに……。  ふと大粒の雫が頬を伝って地面に落ちた。  パタパタと雨が降り始め私はホームのベンチに一人座る。幸いな事に周りに人は居ない。  運行を見合わせるとアナウンスが流れ私は緩慢な動きで会社の上司に連絡しようと鞄に手をかける。  でも、そこで気がついた。手にスマホを握りしめたままだった事に。  胸の奥がズキリと痛む。  私は重い指で上司に電車が停まってしまって出社に間に合わない旨を伝えるとスマホを鞄の中にしまった。
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