涙雨

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 暫くすると雨は小雨になり運行再開のアナウンスが流れ直ぐに電車がホームに到着した。  ドアが開き中を見るとその席に彼はもう座っていない。  私は彼の居ないその席に座る。    少しして電車は動き始めた。  電車はぐんぐんスピードを上げ周りの景色が流れ始める。  すると不思議な事に今まで気にしていなかった外の景色が目に飛び込んでくる。  それは森や畑、古民家の並ぶ団地。春に入社してから三ヶ月の間。同じ時間、同じ電車、同じ席に座り見ていたはずの風景は何もかもが目新しかった。  苦笑してしまう。  暗いトンネルに入ると窓に反射して自分が映る。  隣のポッカリと空いた席が目に入り、気持ちが再び沈みそうになったその時だ。窓の外がパッと明るくなりあまりの眩しさの余り目を瞑った。 
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