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扉は三重の鍵で固く閉じられていて、おそらく開錠できるのは王族の方々のみなのでしょう。
鍵を差し込み、回すときに、鍵と鍵穴が淡い光を発したように見えました。
おそらく魔力を通したのだと思いますが、いかがかしら、トリュステン王子。
がちゃりと金属音が響き、王子自ら扉をゆっくりと開いてくださいました。
そこには、黄金の台座の上に幾重にも重ねられた布に立てかけられているかのように設置された大きな剣と杖がありましたの。
どちらも大きな宝玉のようなものが付いた立派なものでしたわ。
まさに国宝と呼ぶにふさわしいものでしたの。
それを間近に見ることができるなんて、本当に畏れ多いこと!
「この剣は勇者の剣、杖は聖女の宝杖と呼ばれています。勇者でなければ鞘から抜くことはできないと伝えられていますし、宝杖の方は聖女でなければ女神の加護による光を埋め込まれている宝玉が発することがないそうです」
思わず私は成人した清里ちゃんが、この宝杖をかざしている様を想像してしまいましたけれど、それは絶対にあってはならないことですわ。
私たちは帰る術を見つけて、必ずや全員で元の世界に戻ると誓い合っております。
もしも全員ではなく1人2人程度ならばとなれば、きっと誰もが戸田さんと清里ちゃんを帰すことに賛成してくれるはず。
向こうの世界では、お母さんが悲しみの涙に暮れていることでしょうから、一日でも早く清里ちゃんをお母さんの元にと願うのは人として当然のこと。
ええ、私なぞ最後でいいのですよ。
老い先短い身ですから、亜麻音さんや英也さんのように将来有望な若者たちも無事に帰してあげなければ。
まあまあ、皆さん、そんなに興奮しないでくださいな。
あくまでも私個人の考えですし、まだ帰る手段は見つかっておりませんでしょ。
話を戻しますわね。
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