episode1 こんな勇者ってありですか!?

18/55
前へ
/228ページ
次へ
わけのわからない声が聞こえてくるのは本当に時折でしたので、我慢も出来ました。 いずれは聞こえなくなるものと思っておりましたから。 それが、トリュステン王子とコートニー夫人と共に今回の倉庫の改装に立ち会っておりましたところ、急に頭の中に大音量で響いてきたのですよ。 『そのような場所に我はおらぬ!』 『そなたのすべきことはそのようなことではない!』 『早々に我の元へ馳せ参じ我を抜け!』 これには私も苦情の一つを申し上げたくなってもおかしくはございませんでしょう? 声の主がどこにいようがかまいません。 私の知ったことではございませんもの。 ですが、私が行っていることはこのお城にとって非常に重要なこと。 非常時の備えだけでなく日常的に使用する物品の整理も行っていたのですから、それを軽んじるような発言はいただけません。 私の心の中で生み出された幻聴であれば、私の性根が歪んでいたと反省もいたしましょう。 しかし、この世界は私が今まで暮らしてきた世界とは異なります。 もし得体の知れぬ何者かが勝手に私に干渉しているのだとすれば、それを明らかにし止めさせなくてはなりません。 「わかりました。あなたの元に参りましょう」 私が突然そのようなことを声に出して言ったものですから、トリュステン王子をはじめ周囲の皆様を大層驚かせてしまいました。 それでやはり私だけに聞こえていて他の方々には聞こえていないのだと確信いたしましたので、果たしてどう説明していいのやら困ってしまいました。 頭の中に声が響くなんて申し上げたら、皆様私の体調を心配してくださいますでしょ。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1524人が本棚に入れています
本棚に追加