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ですから王子にはこのように申し上げたのです。
「私、もう一つやらなければならない仕事があるようですの。念のため、トリュステン王子とごく少数の護衛の方だけ付いてきてくださいません?」
「仕事、ですか?それは城内でしょうか」
トリュステン王子に尋ねられましたけれど、私にもはっきりと答えることはできませんでした。
私の申し出に王子は少し考え込んでいらっしゃいましたけれど、わかりましたと近衛2名を従えてついてきてくださいました。
それには心から感謝申し上げます。
声に導かれるまま廊下を歩き、階段を上り、また降りて、辿り着いたのはお城の宝物庫でした。
非常に重厚な扉の前で、私はそこが宝物庫だとわからず、王子に何のお部屋か伺って初めて知ったのですよ。
「ノセ夫人。あなたはこの宝物庫にどのような仕事があるというのです?」
当然そのように尋ねられますわよね。
お城の宝物庫であれば厳重に管理もされておいででしょう。
王族の皆様の財産が収められている場所なのですから。
ただ、声は明らかにそこへ入って来いと言うのです。
さすがにこれは説明をしなければと、私は王子に聞こえていた声の話をいたしましたのよ。
高齢の私が呆けたと思われてもいたしかたありません。
私の話を聞いた王子は、何やら考え込んでおいででした。
近衛のお二人は困惑したご様子でしたわね。
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