1522人が本棚に入れています
本棚に追加
「・・・確認したいことがあります。私の名において、ノセ夫人の入室を許可いたしましょう」
今思えば、私より早く王子は声の主の正体に気づいていらっしゃったのかもしれませんわね。
王子に命じられて、近衛の一人が鍵を持ってきてくださり、王子の手によって宝物庫の扉が開かれました。
窓一つなく真っ暗な中、王子が手をかざすと壁に設置された魔石入りの灯りがついて、徐々に宝物庫内が明るくなりました。
王子が魔石に魔力を流したのか、王族にしかわからない仕組みになっていたのか、もちろん私にわかるはずがございませんわね。
ただ私は、声のする方へと歩を進めてまいりました。
立派な甲冑、宝飾類、何代か前の王族の方々の絵画や身につけたであろう豪華な衣装などをかき分け、奥へ奥へと進むと、そこにはさらにもう一つ扉がございました。
宝物庫の中にまた扉ですのよ、何か特別なものが中にありそうですわよね。
たとえば王位継承時に必要なものとか、王族であるものを証明するものとか・・・私にはさっぱりわかりませんけれども。
『さあ、扉を開けよ』
『我の前に立て』
『我にその姿を見せよ』
声は相変わらずで、その扉を開けろとせっつくのです。
王族でも、ましてはこの世界の人間でもない私に、このような特別な場所に立ち入ることが許されるものかしらと非常に戸惑っておりましたら、王子自ら「この中に入ることを望まれますか」と聞いてくださいましたの。
やはりわかっておりましたのね、トリュステン王子は。
最初のコメントを投稿しよう!