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ともかくも、私は長らく私を呼んでいたものを対面したのです。
不思議でございましょう、剣は剣、ただそれだけの物。
人間が使う道具がしゃべるなんて。
私たちの世界でしたら、今は何でしたっけ、読み上げ機能?音声機能?
パソコンや携帯が声を発する技術がございますわよね。
AIというのでしたっけ。
私、本当にそういうものには疎くって。
きっとお若い方々なら理解して使いこなしているのでしょうけれど。
「私を呼んだのはあなたかしら」
散々私の頭の中に語り掛けてきたのですもの。
勇者の剣とやらが私の頭の中に語り掛けてきていたのでしたら、面と向かっての会話も成立いたしますでしょ。
『ようやく来たか。勇者よ、さあ!我を抜け!』
「抜きませんわよ」
『は!?』
ええ、きっぱりお断りいたしました。
当然じゃございません?
「あなた、どのような思惑があって私に抜けとおっしゃるの」
『そなたは異世界より来訪した勇者である。我は勇者にのみ与えられる剣なのだ』
「抜いてどうしろと?」
『我を使え。我と共に戦場を駆け抜け、勝利せよ』
「でしたらなおのこと抜けませんわ」
『は?』
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