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『な、なんという酷いことを・・・我は勇者と共にあるべき存在としてこの世に生まれたというのに・・・我を受け入れぬとは・・・ううう・・・』
「あなたを生み出した方があなたにどのような役割を与えたのかはわかりませんが、今は戦乱の世ではありません。時が経てば世界の在り方も変わっていくもの。それを考慮せずやみくもに戦争を欲するのは、もはや勇者に相応しい剣とは呼べませんし、私はあなたを認めません」
『わ、我が勇者の剣ではないと・・・!ひ、ひどい・・・!今世の勇者はひどすぎる・・・!おおお・・・!』
泣き声が頭の中に響き渡って、たいそう不愉快でございました。
勝手に呼びつけておいての泣き言ですのよ。
『これまでの勇者は皆、我を手にして歓喜していたというのに』
「皆、お若い男性ではございませんでしたこと?」
『そうだが』
「私のいた世界から呼び出されたお若い方々であれば、戦の体験もなく現実感もなかったのでしょう。勇者という肩書きは、それはもう名誉で特別なことと思われたに違いありません。ですが、己の存在が戦の引き金火種となり、その手で数多の命を屠ることに気づけば、おいそれと喜ぶことなどできますまい。それに、皆、あなたを十分に扱える剣技の持ち主だったのかしら?」
『それは我の力量で』
「勇者はあなたの操り人形ではありませんことよ。私はあなたの手駒になることを望みません。私は私の意志で、共にこの世界に召喚された大切な方々と生きてまいります。もう二度と話しかけないでくださるかしら。私にあなたは不要です」
『そ、そんな・・・!勇者が我を見捨てるのか!?あああああ!』
未練がましゅうございましょう?
私、きっぱりお断りさせていただきましたのよ。
なのにいつまでもごねて、本当に厄介。
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