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『・・・・・・・・・は?』
一瞬、間があきましたけれど、剣でもぽかんとするものなのでしょうか。
顔こそございませんけれど、そのような感じが伝わってきました。
「剣でなければここから連れ出すことも可能かもしれません。戦の道具として活躍しようなどと思わなければ、まだこちらも譲歩しようがあるというものです」
とはいえ、剣でございましょう。
刃物ですから、まさかほうきやはたきになれるとは思えません。
お掃除に使えないのなら、お料理ならよいのでは。
「包丁ではどうかしら。それでしたらお肉やお野菜を切るのに使ってあげられますわよ」
『我にそのような雑事をせよと言うのか!』
怒り出しましたけれど、私と共に来るのであれば日常生活で役に立つものになっていただく方が有益でございましょう。
あらあら、皆様まで情けない顔をしないでくださいな。
相手は勇者の剣?ええ、知っておりますわよ。
だから何だと言うのです。
私は誰かを傷つけるための道具をよしとはいたしません。
普通の剣も勇者の剣も、用途に変わりはございませんでしょ。
なのに、生活用品に変化するのは嫌だと頑なに断りますのよ、あの剣。
問答するのも疲れまして、私としては最後の譲歩をいたしましたの。
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