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「それ、多分ユータくんね」
「ユータくん?」
その日。同居の祖母に尋ねてみると、彼女はにこにこしながら言ったのだった。昔からあの商店街にいる男の子なの、と。
「あたしの友達が名前を聞いていたわ。ユータくんっていうんですって。坊主に近い短髪で、目が大きくてくりくりした可愛い子でしょう?小学校四年生くらいの」
「うん。みっちゃんより、ちょっとおっきかった」
「その子はね、くじ引きとか福引とか……そういうもので子供が“あと一回やらせて!”って言うと、いつの間にか傍に立ってるの。で、一回だけ、くじが引ける券をくれるのよ。お金が必要な時は、屋台のひとに一回分だけお金を払ってくれるらしいって話もあるわね。あたしもユータくんに助けてもらって、福引したことがあるわ。当たったことはないけどねえ」
まあ福引の当たり率が低いのは事実である。その日も、ユータくんがくれたくじでクマさんを引き当てることはできていなかった。
「おばあちゃんが子供の頃からいるってことは、オバケなの?」
私が尋ねると、多分ね、と彼女は言った。
「きっと、何か未練でもあるんでしょう。あるいはあの商店街の妖精さんとか、そういうのかもしれないわねえ。……きっと優しい子だったんでしょうね。だから、子供達にくじを引いて、幸せになってほしいのでしょう。でも、ユータくんについてみんな詳しいことは何も知らないの。くじを渡すと、すぐどこかにいなくなってしまうのだから」
「へえ」
おばあちゃんが子供の頃から存在する幽霊。お化け屋敷が苦手な私だったが、何故かユータくんのことは怖いとは思わなかった。
むしろ、ちょっとだけわくわくしたのだ。
幽霊と友達になれたら、それはきっと素敵なことだと。
――次に会ったら、もっと話聞いてみようかな。
そしてできれば、彼がくれたくじを当ててみたい。
何故かユータくんもそれを望んでいると、そんな気がしたのだ。
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