人生という名の山を私は登る

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「ねぇ、今度は富士山の話聞かせてよ」 「え…あ、うん。写真も色々あるよ」  孝明が携帯画面をスクロールしながら富士山の画像を探し始める。 「はい、これ」  私たちの方に向けて差し出された画面を、泰ちゃんがスワイプしていく。 「足場最悪だね…ゴロゴロしてる」 「人多すぎない⁈何この行列」 「ひゃー…雲がすごい」 「雲海だ、雲海と御来光‼︎」 「やっぱ、頭痛くなったりとかしたの?」  泰ちゃんが孝明に問いかける。 「連れは結構酷かったけど、俺は全然だったよ。普段から山登りしてたから」 「色々付き合わされたもんな俺ら。特に高尾山」  裕正が身を乗り出して北斗に同意を求める。 「あぁ、高尾山な。全コース制覇」  そう言って北斗が笑う。 「…3人は大学からの友だち?」 「うん、そうそう。全員上京組」 「2人はいつからこっち住みなの?」  裕正に続いて孝明が質問してきた。 「私は産まれた時からずっとここ」 「私は大学で東北行って、就職を機にこっちに…」 「やっぱり就職するなら都会でーって感じ?」 「あぁー…うん。田舎にはあんまりなかったんだよね…障害者雇用」 「…はいはい、沈黙しない‼︎初美はそこいらの社員より有能だから」 「それはそう。私、我ながら有能だと思う」  2人で笑い合う。
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