人生という名の山を私は登る

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 トイレから出ると、北斗が立っていた。 「…」 「そのまま帰る気だっただろ?」 「……そんな事無いけど」 「んはッ…分かりやすいな」 「あぁ、お金…」  杖のストラップを左手首にかけ、右手でバッグからサイフを取り出した。 「金はいいから連絡先教えて」 「だから、昔の知り合いとは…」 「未来の話だけ…現在(いま)と未来の話だけをしよう」 「はい?」 「矢崎北斗です。25歳です。友達になりたいです。連絡先を教えて下さい」 「…何それ」 「はい、携帯出して。今笑っただろ?篠宮の負け」 「負けって何?しょうもない」 「あ、そうだ…これからは俺も名前で呼ぶわ。初美って登録する」 「…お金受け取らないなら連絡先は教えない」 「分かった、受け取ります」  お金を渡した後、アドレスのQRコードを表示させた携帯を差し出した。 「はい」 「…やっと聞けた」 「じゃ、帰るね」 「ありがとう、またな」 「……またね」  北斗が嬉しそうに笑った。  数時間後にきた『おやすみ』のメッセージに思わず口元が緩んだ。
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