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花火か…。
もう随分見てないなぁ。
最後に見たのは事故に遭うよりももっと前…高校3年の夏だった。
受験の息抜きだと言って、夏期講習の帰り道に女子3人で地元の花火大会に行った。
そこでバッタリ北斗に会って一緒に花火を見る事になった。
隣のクラスの北斗は友達の友達で、それ程親しい訳ではなかったけれど、話せば楽しかったし…話せると嬉しかった。
バランスの悪い5人組は狭い道で2人と3人に分かれた。
一番前を歩く私の友達と北斗の友達。
その後ろにもう1人の友達と北斗と私。
人の波に押されて次第に2人と2人と1人になった。
まぁいいや、このまま歩いていればそのうち追いつくだろう。
テキストの入ったリュックを前に抱え、人の波に身を委ねていた。
「いたいた‼︎」
不意に掴まれた右手と北斗の笑顔。
その横から移動して来て左手を握る友達の笑顔。
両手を繋がれて歩くのなんていつぶりだろう。
「ちょっと‼︎子供みたいで恥ずかしい」
「ダメだね、離したらまた迷子になるに決まってる」
「そんな事ないって…」
「綺麗なものを1人で見るのって、何か寂しいじゃん……な」
「そうだそうだー‼︎離さないぞー」
両手を握る手に力が込められる。
私、顔に出てたかな?
今日渡された模試の結果がイマイチで、正直ちょっとへこんでた。
真夏の汗ばんだ手、温かいなぁ…って思った。
あの日見た花火は、一生のうちで一番綺麗な花火だったと思う。
両手を繋がれて歩く…この先の人生で二度とできない事。
大切な大切な、思い出したくなかった思い出だ…。
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