1.先輩

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1.先輩

 隣り合わせで眠る彼のことを僕は「先輩」と呼んでいた。やけに落ち着いていて、何事にも動じないからだ。  ただ、彼と僕はどうやら誕生日が近いらしいことを、彼の言葉の端々から僕は感じ取ってもいた。 「思ったより土の中って熱いのな」  もぞついて体勢を変えながら先輩は言う。その彼の言葉に僕も頷く。本当に熱い。このままじりじり焼かれて終わりだったらどうしよう。 「僕たちって本当にこのまま眠っていていいのかな。もう外に出てもよいころでは?」  不安を口にする僕を先輩は、まだまだ、と軽い口調で制止する。 「ここに来てまだ一年とかだろ。俺もそのくらい。あと三年はこのままでいなきゃ。そもそも体もできてない。しっかり体ができあがらないと表に出たとたん秒速で死ぬぞ」  さらりと怖いことを言う。戦慄した僕は身をふるふると震わせた。 「それは、嫌だ……」 「だったら大人しくしてな。大丈夫。こうして話していれば時間なんてあっという間に経つよ」  どうしていつも平常心でいられるのだろう。僕たちが目覚めたのはほぼ同じ時期のはずなのに。   その疑問が顔に出ていたのか、先輩は朗らかに笑うと、教えてくれた。  俺、実は二度目なんだよ、と。
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