戦争と傘

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 物資調達の流れはこうだ。まず、第一発見者が騒ぎ立てる。次に、人集りができる。お互いを冷やかし合いながら一通り内容を確認した後、その群れで一番強い雄が持ち帰る。持ち帰って何をするのかは敢えて書かない。そして翌日、学校の裏山に隠された保存袋に納品するのだ。  問題はその後だ。ガキ大将が一通り検品を行った後に皆で分け合うのだ。最初はひとり二ページずつ、つまり一枚ずつだったのが、次第に二枚、三枚と増えていき、終いには、ひとり一冊ずつ支給する話まで持ち上がった。人間の欲望には際限がない。恐ろしい話だ。もちろん、それほど潤沢に資源があるはずもなく、一ヶ月を待たずして周辺地域の物資は乱獲により枯渇した。完全に供給ペースが間に合わない状況に陥った。  そうなると、お互いに絵本の切り抜きをトレードして急場をしのぐ事になる。しかし、誰が触ったのか分からない汚いものはいらないなどと、そもそも論を持ち出し、不満を垂れ流す者が増えていった。本件を取り仕切るガキ大将には大変頭の痛い話であった。自分が物資の金脈を掘り当てるまでは……。  当時の自分は、物資への人並み程度の興味に加えて、昆虫採集に熱中していた。一度熱中すると、とことんのめり込んだ。カブトムシやクワガタ、カマキリなどメジャーな昆虫から始まり、そのうちミドリカミキリやアカガネサルハムシなどのマニアックな昆虫を捕まえては愛でるようになっていた。  日本には、独特なメタリックカラーをもつ昆虫が沢山いるのだ。そのメカメカしい姿は、まるで小さな超精密機器であり、超最先端ロボットでもある。そのような昆虫は、特定の植物しか食べない偏食揃いで気難しい。しかし、その植物さえ継続的に入手できる環境であれば、飼育は容易だったりする。週末は誰も足を踏み入れないような深い森に入っては昆虫採集をし、餌となる植物も調達していた。
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