戦争と傘

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 ある日、その深い森で同年代らしき二人組に遭遇した。知らない男達だ。学区が違う。二人ともやや長身で細身、腕が太く、肩幅は広く頑強そうな骨格を持っていた、細マッチョの素養がある、何かスポーツでもやっていそうな出で立ちだ。だがしかし、どこかパッとしない。のっぺり顔としゃくれ顔といったところか。完全に偏見だが、どちらも所謂むっつり顔という類いの顔立ちだと思った。  なぜこんなところにいるのか。雨上がりの湿度の高い梅雨時、それが森の中ともなれば、草葉からの蒸散により、むせ返るほどの湿気だ。不快極まりない。獣道もなく、歩く度に水滴がびっしり付着した枝葉に触れる事になる。全身びしょ濡れだ。カッコイイ昆虫を探すという崇高な目的でもなければ、こんなところに足を運ぶ物好きもいないだろう。  ところが、二人とも虫かごも虫取り網も持っていなかった。なにやら、各々がパンパンに張りだしたTシャツの腹部を両手で大事そうに抱えている。若干角張っているようにも見える。どう見ても挙動不審だ。こちらの存在には気づいていないようだ。ゆっくりと尾行する事にした。  百メートルも歩かないうちに二畳ほどの開けた土地が現れ、そこで二人は足を止めた。警戒するように周囲を見回す二人を見て、咄嗟にその場に伏せた。木々のさざめきもあってか、運良く見つからなかったようだ。しかし、案の定、全身泥だらけだ。ここまで来たら引き返せない。これから何が起こるのか見届ける事にした。
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