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「じゃあ、帰ろうかな」
と言って、明後日の方向に歩みを進めた。それに内心安堵した様子の二人もその場を後にした……。
やはり好奇心には勝てなかった。彼らの姿が見えなくなった事を確認し、スコップの元に走った。先ほど見た要領で地面からスコップをほじくり返し、そこをスコップで掘り進めようとしたところ、一突きでスコップが何かに当たった。金属音だ。それは灯油缶ほどの大きな金属の箱だった。
恐る恐るその箱を空けると、その中にはなんと三十冊を超えるほどの成人誌と呼ばれる「物資」が眠っていたのだ。数冊ずつ、チャック付きのポリ袋に入っていた。湿気対策だろう。抜かりがない。これはとんでもない金脈を掘り当てた。
さて、その大量の物資をどうするか。自身も年頃の男として考える事はあったが、全てを自宅に隠せる自信もない。お気に入りの一冊だけをTシャツに忍ばせて、丁寧に原状回復した後、その場を去った。
ここで、その物資をクラスで管理するガキ大将の話に戻る。クラスの悪ガキとはなるべく関わらない生活を送っていたが、ガキ大将だけは例外だった。
好戦的で腕っぷしは学校いちだが、奢りはなく、面白く、仲間思いでもある良い奴だった。なんでもない事を全て笑いに変える錬金術を心得た、根っからのエンターテイナーだった。クラスで隣の席になった事があるが、授業中にいちいち面白い事を言うので腹がよじれるほど笑った。図らずも学級崩壊に加担していたという事実を鑑みると心が痛むが、残念ながら、彼から息をするように発せられる絶妙なギャグに抗うことはできなかった。
そんなガキ大将から言わせれば、奇抜な発想で大変な事をやらかす自分が面白いし、何かと助かっているらしい。助かるとは……? 良く分からないが褒められているらしいので悪い気はしなかった。
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