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「なあ、お前も分かってるとは思うんだけど、物資が足りないんだよな……」
いつもの帰り道、ガキ大将は言った。この手の内容をいつも唐突に話し出す。現状報告のように聞こえて実際は相談事だという事は、珍しく曇った彼の表情から察した。
「だろうね。教室で男子達が物資の取り合いで喧嘩するなんて、どうかと思うよ。女子達も見てるのに……」
「だよな……。いっそ隣の学区に遠征でもして調達するか!」
それはない、と思った。ただでさえ喧嘩っ早い連中の集まりだ。他校のテリトリーで問題を起こさずに帰って来られるハズがない。学区を越えた喧嘩祭りが始まってしまう。そう考えると、先日見つけた秘密の金脈の事を話さずにはいられなかった。
「実は、見つけたんだよ……」
「何を!?」
「物資を……」
「どこで!?」
「森の中……」
「どれくらい!?」
「三十冊以上は……」
「……!?」
まるで誘導尋問のようだった。期待に目を輝かせる大型犬のようなガキ大将の後ろには、勢い良くブンブンと触れる尻尾が見えるようだった。次の日の放課後に、空っぽのランドセルを背負って秘密の金脈に案内する事にした。
ガキ大将は大興奮だった。目の前の宝の山に目が眩んだのか、これらの出所について何も聞いてこなかった。もはや誰の物かなど関係ないのだ。今からこれは我々の物になるのだから……。
三十冊余りの物資も、空っぽのランドセルが二つあれば全て運び出せた。歩みを進める度に、ランドセルのベルトが肩に食い込む。嬉しい重さだ。特にガキ大将は普段教科書など学校に置きっぱなしである事から、重いランドセルに慣れない様子だった。デカい体の割に、肩がベルトに擦れて痛いなどと似合わない事を言うので笑った。ガキ大将も笑った。
それぞれ、お気に入りの一冊を懐に収め、自分はこれで二冊目だが、残りを所定の保管場所、つまり学校の裏山に隠された保存袋に納品した。ガキ大将から感謝された。
「助かった! ありがとな!」
そしていつものように、二人で他愛もない会話をしながら下校した。
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