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それから一週間が経った。あれ以来、いつにも増して静かに大人しく過ごしていた。下校時は隠れるようにコソコソと帰った。悪ガキグループからはガキ大将を含め何となく距離を取っていた。そんな時だった。クラスの悪ガキ共から不穏な会話が聞こえてきた。
「この前の喧嘩、凄かったな! ありゃ戦争だな!」
「次はこっちが攻める番だ! ボッコボコのギッタンギッタンのケチョンケチョンの……」
「分かった分かった! つまり倍返しって事だよな! やってやろうぜ!」
きな臭い話になってきた。戦争などと、物騒な言葉を使う。どうやら、隣の学校と戦争、つまり大規模な喧嘩があったらしい。学区内の団地の公園に、隣の学校の生徒が攻めてきたのだ。原因は、こちらの学校の生徒が相手の学校の生徒二人をボコボコにした為とのこと。しかも自転車まで壊されたと。明らかにあの自転車事件が原因だろう。
ガキ大将含めこちらの悪ガキ共はそれには懐疑的だった。そのような武勲をたてた奴がいるなら、名乗り出ないはずがないと。つまり潔白を主張したのだ。それにより話は拗れ、最終的には大規模な騒動になった。
それからというもの、無益な応酬の繰り返しで喧嘩の舞台は学区を越えた。統率力は別としても、兵力は、数、練度共にこちらの学校が圧倒的優位だった。何の躊躇もなく倍返しを繰り返すような戦闘スタイルで相手校を震え上がらせた。可哀想に……。
そしていよいよ自身の犯した過ちの重大さに耐え切れなくなり、事の顛末をガキ大将に打ち明けた。物資の出所、自転車事件の事、それが大騒動の火種になったという事……。
「いつも何かと助かる! あいつらめ、ざまあみやがれ!」
といった調子で、どういう訳か、ますます気に入られてしまった。こんなはずではなかったのに……。
それからというもの、戦火は指数関数的に拡大して、母校の悪行が近隣の複数校に知れ渡る事になった。物資については百冊を超える程度は鹵獲(ろかく)したであろうが、我々の欲望が満たされる事はなく、校内の小競り合いも続いた。求めれば求めるほどに満たされなくなる。そんな状況が続いた。
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