3:インストアライブ

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「サラちゃんからもあったけど、やっぱり私たちエレメンタルが一番大切にしたい活動はライブなんです……そこで、来月から全都道府県ライブツアーを行うことになりました!」  ノンからの発表にどよめきが起こる。今までも新曲が出るたび各地でライブを行うことはあったが、全都道府県を回ると言うのは初めてのことだ。そこまで気にすることじゃないのに箱の問題や日程の問題、そもそも採算が合うのかなど心配になる。  そんな心配を他所に月島は目を輝かせてノンの話を聞いている。チラチラと様子を伺うこちらの視線にも全く気がつかない。ノンの発表に呼応するように他の三人も次々と言葉を繋げていく。 「今までも精力的にライブを行なってきたつもりだけど、まだ行ったことがない県とかもあるから楽しみ!」 「そうね、細かい日程なんかはこれから発表されるので追加の情報を楽しみにしててください。ただ四ヶ月ほどで全都道府県回るのでなかなか過酷」 「三日に一回ぐらいライブやってる計算だからね」 「しかも、貧乏旅行&小箱!」  もはやお約束のようにリエルのつぶやきにサラのチョップが入る。 「経費削減とお客さんとの距離感を大切にした会場!」  聴いている限り、ドームツアーのような大掛かりなものではない。ドームなんかでライブをできたらそれはそれでファンからしたらお祭り騒ぎだが、エレメンタルはサラが言うように小さめの箱でお客さんとの距離感が近いライブをしていて欲しいなどと勝手に思ってしまう。  この辺りは難しいところだ。古参ファンは自分以上に悩みどころだろう。エレメンタルの認知が広がることは嬉しくもあり、にわかファンが増え、その距離感が遠くなることは悲しくもある。そういう意味では全都道府県の小箱を回る今回の全国ツアーはファン心理としてはちょうど良いのかもしれない。 「そういうわけでなかなかハードなスケジュールだけど、いつも通りエレメンタルは全力でみなさんに歌と元気をお届けしますので、これからも応援よろしくお願いします!」 「もちろんこの街にもまた来るからね!」 「それでは今日はありがとうございました。次で最後の曲になります。今日は会場の関係でアンコールもないらしいので、最後に思いっきりみんなで出し切りましょう。それでは聴いてください『Eternal Riff』」  照明は一段と明るくなり、ステージはサイリウムの銀河を漂う惑星のように思えた。その中を魂そのものを表現するような歌声とダンスが光に照らされて浮かび上がった。
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