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あの事件から麗香ちゃんとは子供の頃みたいに普通に話せるようになった。
「ふ~ん、今はアパートで独り暮らしなんだ…
でも、家からだって通えるじゃない?」
僕と彼女の地元は、大学から電車で30分程度だ。
彼女は家から通っている。
「僕は朝弱いから大学に近い方が良いんだ
…それに独り暮らしってしてみたかったんだよね」
「私も独り暮らししたかったけど、お父さんが絶対ダメだって…」
「おじさん、麗香ちゃんの事になると目の色変わるからね…」
僕は昔の事を思い出して苦笑いした。
幼稚園の頃、手を繋いで帰ったらいきなり「麗香に触るな!」と怒鳴られた。
すぐに彼女が怒ってくれて、手を繋ぐ事は許された。
そんな彼女の父親は公務員で普段はおとなしいくらいの優しい人だが、一人娘の彼女を兎に角大事にしている。
この前の事件の時は大学に怒鳴り込んで来たそうだ。
「…ほんとに過保護で困っちゃうわ」
彼女も呆れるくらいだ。
「それじゃあ麗香ちゃんの彼氏になった男は殺されかねないなぁ~
大変だなぁ~西条」
隣にいた野口が小声で呟き、ニヤニヤしながら僕の肩を叩く。
「な、なんだよ…
何で僕に…」
彼女は頭も良く明るく社交的、僕とは正反対の娘で幼馴染みじゃなければ話す事も出来ない存在だ。
「なに二人でこそこそ話してるのよ?」
「何でもないよ
そうだ、麗香ちゃんは彼氏いるの?」
野口が直球な質問をした。
「いないわよ」
即答だった。
「じゃあ、俺にもチャンスはあるんだ!」
野口は喜んだが…。
「野口くんはないわね」
あっさり振られていた。
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