№2

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(ゆう)ゃん、ここやったら目で探さんでも、草、撫でるように網をスイングするだけで何か入りよるで、やってみ!」 「こうか?」 裕は(しゅう)を真似るように、草の背丈の中ほどで八の字を描くように網をスイングさせた。 『危ね!何すんだよ! ここは俺の縄張りだぜ! 誰が来ようと、一歩たりとも・・アッ、ア~ァ・・』 『だから言ったのに⁉馬鹿だね・・エッ俺、おれは関係ねえ・・って、アッ、ア~ァ・・』   それからしばらくしたころだった、暗雲が低く立ち込めたかと思いきや、西の方から不気味な音が聞こえ始めた。 (ゴロゴロッ、ゴロゴロッ) 「あっ秀ちゃんあの音、雷ちゃう⁉ えらいこっちゃ、どこかの木の影に隠れよ⁉ 秀、早う!」 「裕ちゃん、樹木の傍はいっちゃん危ないねんて、あの日よけの屋根の下に行う!」 「・・うん、そらそやな!」  裕と秀は同じクラスの小学五年生である。 彼らの校舎は鉄筋三階建てでその一階に裕と秀の教室がある。東側の窓からは治安を維持する高さ約二メートルの塀しか見えない。 二階・三階では見えるはずのロケーション、その塀が障害となり一階の教室では塀以外は何も見えない。 この日、4時間目の授業が始まった。裕の一つ前の席が秀である。秀はしっかりと前を見つめ先生の話に耳を傾けている。 それとは違って裕の視線はその変哲もない塀を、いや正しくはただぼんやりと窓の外に向けられていた。 「あっ! 今のあれなんや⁉・・」  裕は視線を送っていた窓の外で何かが落下して行くのを目撃した。裕はすぐ前に座る秀の背中を指でつついた。  授業の邪魔をされた秀は目立たぬように小さく後ろに首を捻り小声で囁いた。 「裕、やめろや!」
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