№3

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№3

「何か分からんけど上から落ちてきたんや!」 (ゆう)なりに抑止して囁いたつもりだった。でも残念ながら先生はそれを聞き逃さなかった。 先生は授業を一時中断し二人の元へ歩み寄る。 「どうした坂、何が落ちたんや?」 坂裕も(しゅう)もしばらく口をつぐんでいたが目前で仁王立ちした先生の圧に負けてしまった裕が先に口を開いた。 「先生、怒らへん?」 「うん、なぁーも怒らへんで」 「窓の方を見てたらな、な・・何かが落ちてきたんや」 「どこから?」 「上から」 「ごめん、先生の訊き方が悪かったわ、その何かが落ちた場所やけど、どこら辺か分かる?」 「先生・・落ちた場所なんか見えへんやん、落ちて行くとこだけ見たんやて」 このようなやり取りに業を煮やした秀が先生に向かって一言発した。 「先生、窓開けてみましょうか?」 「開けたらアカン! 危険やから校則で窓の開閉は禁止になってんるねん」 「それやったら僕が表に行って見てこうか?」  裕は自分が外に出ることを提案したが先生は裕を制し、まるで刑事コロンボのようにおでこに手をあてしばらく無言で考えている。だがコロンボには出来ないだろうマジックをやってのけた。ポケットから携帯電話を取り出すと誰かと話し始めたのだ。  それから間もなく校長先生と教頭先生が窓の外でこちらに向け手を振って合図してきた。 教頭は窓ガラス越しに裕を相手にジェスチャーを交え落下地点を捜索していた。 だが膝までに伸びた草むらに阻まれて裕が目撃したという落下物は発見されなかったのだ。
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