№5

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№5

 結局、燕の餌は「限りなく生きている昆虫」だと結論付けた(ゆう)(しゅう)は虫取り網と虫取りカゴを両手に、公園に行くのが日課となっていた。 「秀ちゃん、この雨いつ頃止むやろな?」 「そやな・・あと三十分ぐらいかな? 見てみ、あの西の空、雲が切れてるやろ」 「秀は賢いな、俺なんかな~も知らんもんな」 「そんなことあれへんで、裕ちゃんかて農水省に電話してくれたやん」 「電話のおっちゃん言うてたやん『捨て置いてください』やて、アホちゃうか、死んでしまうやないか」 「せやけど最後には『それなら育ててあげてください』て言うてはったやん、裕ちゃんの粘り勝ちやで」 「そやけど国の人て野鳥には冷たいよな、行き倒れを捨て置けて言うんやからな」 「これ『行き倒れ』て言うんやろかな?」  二人が話してるうちに雨は上った、雷雲は少し前に東へ離れて行ったようだ。 「ほんだら秀ちゃん、行こか?」 「裕ちゃん、今日は辞めとこ」 「なんでや?」 「あのな、雨降ったら殆どの昆虫は葉っぱの裏側に隠れるのん知ってる?」 「そらそうやろ!」 「なんで知っとったん⁉」 「そら誰かて濡れるの嫌やろし、儂らもこないして屋根の下で雨宿りしてるもん」  裕の現実で例える説得力なんかお見事ですね。しかも昆虫と自分たちとを同じ立ち位置で考えられるなんて裕の優しさが伺えますよね。
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