№6

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№6

「今日はちょっとしか捕られへんかったけど、昨日のやつまだあるからエエやろ?」 「そやな秀ちゃん、今日は虫が隠れてしもうたもん、明日や、明日又来たらええやん」 裕ちゃん、そこは違うねん。アッ大阪弁で言ってしまった。 「裕ちゃん、明日はやめとこ、明日こそ危ないから」 「なんで?」 「例えばやで、今夜バーベキューパーティーするはずが、雨で中止になったとするやん」 「それやったら家の中で焼いたらええやん」 「裕、違うねんて、山でキャンプしてるから家なんか無いねん」  例え話って、話す側は自らロケーションできるが、聞く側は多義にわたって想像力が働くためしばらくは話が嚙み合わないようだ。 「それやったら・・」 「裕、ちょっと待ってぇや、違うねんて、パーティーが中止になったら腹減るやろ?そない言うてんねん」 「そんなん儂、辛抱できへんわ!」 「そやろ⁉ それやったら何でもええから言うて食べるもん探すやろな⁉」 「うん、儂やったらポテトチップス食べるかな?」 ようやく二人の話がかみ合ったようである。  秀が言いたかったのは、常なら運よく逃れられたかも知れないマダニやヒルたちとの遭遇も、雨上がりともなるとそうはいかない、空腹のマダニたちは食材を選ばない、それが危険なのです。最悪の場合は命に係わることもあると聞く。 「そらあかん、儂、夜よりも昼の方が好きやけど、昆虫のヒルは苦手やねん」 「ヒルに強い奴なんて居らん(おらん)わ!」
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